情報更新日:2026年10月4日
※本記事は、2026年8月18日時点で確認できる公的情報をもとに作成・更新しています。企業年金の制度内容や加入条件、資産の移換方法などは勤務先の規約によって異なる場合があります。実際の制度については、勤務先の人事・総務部門や企業年金の案内資料などもあわせてご確認ください。
■はじめに

会社員として働いていると、
「企業年金」
「確定給付企業年金」
「DB」
といった言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。
前回の記事では、会社員が利用できる資産形成制度の一つである「確定拠出年金(DC)」について解説しました。
DCは、あらかじめ決められた掛金を拠出し、その資産を加入者自身が運用する制度です。
一方、今回紹介する「確定給付企業年金(DB)」は、将来の給付の算定方法をあらかじめ定め、その給付に必要な資産を事業主や企業年金基金などが積み立て・運用する企業年金制度**です。
そのため、DCとは「誰が運用するのか」「将来の給付額がどのように決まるのか」という点に大きな違いがあります。
私自身も転職を経験しており、その際にDBの資産を転職先の制度へ移換できる場合があることを知りました。
今回は、
- 確定給付企業年金(DB)とは?
- DCとは何が違うの?
- DBにはどんなメリット・デメリットがある?
- 現職中にDBをDCへ移換できる?
- 転職した場合、DBの資産はどうなる?
といった内容について、初心者向けに分かりやすく解説します。
■確定給付企業年金(DB)とは?
確定給付企業年金(Defined Benefit:DB)とは、
将来受け取る年金給付の算定方法をあらかじめ定め、その給付を行うために必要な掛金を事業主が拠出し、事業主や企業年金基金などが年金資産を運用する企業年金制度です。
厚生労働省によると、DBは「給付建て」の企業年金に分類されます。
一方、DCは「拠出建て」の年金制度です。
簡単にイメージすると、
- DB:将来の給付の算定方法が決まっている → 会社・基金などが運用
- DC:掛金が決まっている → 加入者自身が運用
という違いがあります。
厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方|第15 私的年金(企業年金・個人年金)制度」
ただし、
「DBなら将来受け取る金額が絶対に変わらない」という意味ではありません。
DBの給付内容は、それぞれの企業年金制度の規約や給付設計によって決まります。
例えば、給与や勤続期間などを基準に給付額を算定する制度や、キャッシュバランス型など、さまざまな制度設計があります。
そのため、
「DB=必ず○万円もらえる」と単純に考えるのではなく、
「将来の給付の算定方法があらかじめ定められている企業年金」と理解するのがおすすめです。
■DBでは誰が資産を運用するの?
DBでは、加入者自身が投資信託や株式などを選んで運用するわけではありません。
制度の実施主体である、
- 事業主
- 企業年金基金
などが年金資産を運用します。
DBには大きく分けて、
① 規約型DB
事業主が実施主体となり、労使が合意した年金規約に基づいて運営されます。
企業は信託会社や生命保険会社などと契約し、年金資産の管理・運用や給付を行います。
② 基金型DB
企業年金基金を設立し、その基金が実施主体となって年金資産の管理・運用や給付を行います。
このように、DBといっても運営方法には違いがあります。
■DBとDCの違い
DBとDCは名前が似ているため、最初は違いが分かりにくいと思います。
そこで簡単に比較してみましょう。
| 項目 | DB | DC |
|---|---|---|
| 正式名称 | 確定給付企業年金 | 確定拠出年金 |
| 英語 | Defined Benefit | Defined Contribution |
| 基本的な考え方 | 給付建て | 拠出建て |
| 掛金 | 原則として事業主が拠出 | 企業型DCは事業主が拠出 |
| 運用 | 事業主・企業年金基金など | 加入者自身 |
| 運用商品 | 加入者が自由に選ぶわけではない | 自分で選択 |
| 将来の給付 | 規約で定められた算定方法に基づく | 掛金+運用結果によって決まる |
| 運用結果の影響 | 基本的に加入者が直接負う仕組みではない | 加入者が直接負う |
| 主な目的 | 老後の企業年金 | 老後の資産形成 |
DCには、
- 企業型DC
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
があります。
つまり、
DB=給付建て
企業型DC・iDeCo=拠出建て
という違いをまず覚えておくと分かりやすいでしょう。
■DBのメリット
DBには、会社員にとって大きなメリットがあります。
① 自分で運用する必要がない
DBでは、加入者自身が毎月の商品選びを行う必要はありません。
投資に詳しくない人でも、会社の企業年金制度を通じて老後資金を準備できます。
「投資について勉強する時間がない」という人にとっても利用しやすい制度です。
② 運用を専門家に任せられる
DBでは、事業主や企業年金基金などが年金資産を運用します。
そのため、加入者自身が、
「S&P500にするか」
「全世界株式にするか」
「債券を何%にするか」
といった判断をする必要はありません。
企業年金として長期的な資産運用が行われます。
③ 会社の福利厚生の一つとして活用できる
DBは、厚生年金などの公的年金に上乗せする企業年金として機能します。
そのため、会社にDBがある場合は、
「会社が用意してくれている老後資産形成の仕組み」として活用することができます。
■DBのデメリット
一方で、DBにも注意点があります。
① 自分で運用商品を選べない
DBでは、加入者自身が運用商品を自由に選択する仕組みではありません。
そのため、
「S&P500に集中投資したい」
「株式の比率を高くしたい」
など、自分で積極的に運用したい人にとっては物足りなく感じる可能性があります。
② 勤務先によって制度内容が異なる
DBは、すべての会社で同じ仕組みになっているわけではありません。
給付の算定方法や受給開始時期などは、勤務先の規約によって異なります。
そのため、
「DBがあるらしいけど、毎月いくら積み立てられているの?」
「将来いくら受け取れるの?」
と疑問に思った場合は、勤務先の企業年金規約や人事・総務部門などに確認することが大切です。
③ 自分で積極的にリターンを狙う制度ではない
DCでは自分で運用商品を選ぶため、運用方針によって将来の資産額が変わります。
一方、DBでは加入者が運用商品を自由に選択する仕組みではありません。
そのため、
「自分で投資して大きなリターンを狙いたい」
という人にとっては、DCの方が自由度が高いと感じるかもしれません。
ただし、DBとDCは目的や制度設計が異なるため、
「どちらが優れているか」だけで判断するのではなく、それぞれの特徴を理解することが重要です。
■DBとDCを両方導入している会社もある
企業によっては、
- DBのみ
- DCのみ
- DB+DC
というように、複数の企業年金制度を導入している場合があります。
私自身、これまで2回の転職を経験しています。前々職と前職ではDBとDCの両方がありましたが、2026年1月に転職した現在の勤務先では、企業年金はDCのみとなっています。
ここで気になるのが、「現職のままDBをDCへ移換できるの?」という点です。
■現職中にDBをDCへ移換できる?
結論から言うと、
加入者が自分の希望だけで、現職中にDBの資産を自由にDCへ移換できるわけではありません。
DBからDCへの資産移換には、制度移行や規約など一定の条件があります。
そのため、
「今の会社のDBを、自分で選んで企業型DCへ移したい」
という理由だけで自由に移換できる制度ではありません。
一方で、企業が制度変更を行い、DBからDCへの制度移行が行われるケースなどはあります。
また、企業によってはDBとDCを組み合わせた制度を導入している場合もあります。
したがって、現職中の制度変更や資産移換について知りたい場合は、
- 自社の企業年金規約
- 会社の福利厚生資料
- 人事・総務部門
などを確認するのがおすすめです。
■転職するとDBの資産はどうなる?
では、転職した場合はどうでしょうか。
ここは非常に重要なポイントです。
DBに加入していた人が離職・転職した場合、
一定の条件を満たせば、DBの資産を他の年金制度へ持ち運ぶことができます。
厚生労働省では、この仕組みを「年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」として案内しています。
転職先の制度や、加入していたDBの規約などによって取り扱いが変わります。
DBからは、条件を満たす場合、
- 転職先の企業型DC
- iDeCo
- 通算企業年金
- 転職先のDB
などへの移換が可能です。
ただし、
すべてのケースで自由に移換できるわけではありません。
移換先の制度やDB規約などによって条件が異なるため、転職時には必ず確認するようにしましょう。
■私が転職時に約280万円のDB資産をDCへ移換した体験
私自身、これまでに2回の転職を経験しています。
前々職と前職にはDBとDCの両方がありましたが、2026年1月に転職した現在の勤務先にはDBがなく、企業型DCのみとなっています。
以前から、自分がDBに加入していることや、会社側で年金資産を運用していることは知っていました。
しかし当時は、
「DBと一般的な退職金制度は何が違うのか?」
「退職したらDBの資産はどうなるのか?」
といった仕組みまでは、十分に理解していませんでした。
それでもDBの残高は定期的に確認していました。
その後、自分自身で株式投資やNISA、投資信託について勉強するようになってからは、DBの残高を見るたびに、
「思っていたほど増えていないな」と感じるようになりました。
もちろん、これはDBの運用が悪いという意味ではありません。
DBは将来の給付の算定方法があらかじめ定められ、事業主や企業年金基金などが制度全体として運用する仕組みです。一方、DCは加入者自身が運用商品を選択し、その運用結果によって将来の給付額が変わります。
両者はそもそも制度の仕組みやリスクの負い方が異なります。
ただ、投資を勉強するにつれて、私自身は、
「もし次に転職することがあれば、条件が合えばDBの資産を自分で運用できる制度へ移したい」
と考えるようになりました。
2026年1月の転職でDBから企業型DCへ
そして2026年1月、実際に転職することになりました。
退職・転職に伴う手続きを確認すると、私の場合はDBにあった資産を転職先の企業型DCへ移換できることが分かりました。
その時点でのDB資産は約280万円です。
移換先としてはiDeCoや企業年金連合会の通算企業年金なども検討しましたが、最終的には転職先の企業型DCへ約280万円を移換することにしました。
厚生労働省でも、離職・転職時などに一定の条件を満たせば、DBから企業型DC、iDeCo、通算企業年金などへ年金資産を持ち運べる仕組みが案内されています。
ただし、実際にどこへ移換できるかは、転職先の制度やDBの規約などによって異なるため、誰でも同じ選択肢になるわけではありません。
約280万円が「自分で運用する資産」になって感じたこと
実際に移換して特に大きかったのは、約280万円というまとまった資産を、自分で運用商品を選んで管理できるようになったことです。
現在は企業型DCで自分の考えに合った投資信託を選択し、運用状況も自分で確認しています。
DBのときも残高を確認することはできましたが、基本的には自分で運用商品を選ぶ仕組みではありませんでした。
一方、DCへ移換した現在は、
「何に投資するのか」
「どのような値動きをしているのか」
「現在の評価額はいくらなのか」
を自分自身で確認できます。
私にとっては、もともとあったDB資産が企業型DCへ加わったことで、自分で運用できる元本が大きくなったこともメリットに感じています。
もちろん、自分で運用できるということは、運用結果についても自分で向き合う必要があります。
投資信託などを選択すれば元本割れする可能性もあり、DBからDCへ移換すれば必ず資産が増えるというものではありません。
それでも、自分で投資について勉強し、運用方針を考えるようになった現在の私にとっては、自分で商品を選択し、日々運用状況を確認できる現在の企業型DCの仕組みが自分には合っていると感じています。
今回の転職を経験して、企業年金についても、
「会社が用意してくれている制度だから、そのままにしておけばいい」ではなく、
「自分の資産の一部として、退職・転職時にどのような選択肢があるのかを知っておくことが大切」
だと改めて感じました。
■DBがある会社員は、まず制度を確認してみよう
DBは、会社員にとって非常に重要な老後資産形成の制度です。
しかし、
「自分の会社にDBがあることを知らない」という人もいるかもしれません。
まずは、
- 会社から配布された福利厚生資料
- 企業年金の案内
- 退職金制度の資料
- 人事・総務部門の案内
などを確認してみましょう。
特に確認しておきたいのは、
① 自分がDBに加入しているのか
② 毎月どの程度の掛金が拠出されているのか
③ 将来の給付額はどのように計算されるのか
④ 受給開始年齢は何歳なのか
⑤ 転職した場合、資産をどの制度へ移換できるのか
といった点です。
制度を知らないまま放置するのではなく、一度確認しておくだけでも、自分の老後資産がどのように形成されているのか理解しやすくなります。
■まとめ
確定給付企業年金(DB)は、
将来の年金給付の算定方法をあらかじめ定め、事業主や企業年金基金などが年金資産を運用する企業年金制度です。
DCとの違いを簡単に整理すると、
DB:給付建て・事業主や基金などが運用
DC:拠出建て・加入者自身が運用
となります。
DBには、自分で運用する必要がないという大きなメリットがあります。
一方で、自分で運用商品を自由に選択できないという特徴もあります。
また、転職時には一定の条件を満たすことで、DBの資産を転職先の企業型DCやiDeCo、通算企業年金などへ移換できる場合があります。
私自身も転職をきっかけにDBからDCへの移換を経験しました。
ただし、
「DBが良い」「DCが良い」と単純に決めつけることはできません。
大切なのは、
- 自分の会社にどのような企業年金制度があるのか
- 将来どのような給付を受けられるのか
- 転職時にどのような選択肢があるのか
を理解しておくことです。
会社の制度を確認し、自分の老後資産がどのように準備されているのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
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・確定拠出年金(DC)とは?

・iDeCoとは?

■情報源
本記事では、主に以下の公的機関・法令等の情報を参考にしています。
- 厚生労働省「確定給付企業年金制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062851.html - 厚生労働省「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kigyounenkin.html - 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方|第15 私的年金(企業年金・個人年金)制度」
https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_015.html - 厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/portability.html - e-Gov法令検索「確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)」
※法令の詳細については、e-Gov法令検索で「確定給付企業年金法」をご確認ください。
※企業年金の具体的な給付内容や資産移換の可否、手続き等は、勤務先の制度・規約などによって異なります。個別の制度については、勤務先の人事・総務部門や企業年金の運営機関等で最新情報をご確認ください。
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本記事は、DB制度について初心者の方にも分かりやすく理解していただくことを目的として、筆者が制度の概要をまとめたものです。
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