情報更新日:2026年10月4日
※本記事は、公開後も必要に応じて内容を見直し、情報を更新しています。
■はじめに

前回の記事では、企業の業績や財務状況、事業内容などを分析する「ファンダメンタルズ分析」について解説しました。
今回は、ファンダメンタルズ分析でよく使われる代表的な指標の一つ、
「PER(株価収益率)」について解説します。
PERは、「企業が生み出している利益に対して、現在の株価がどの程度の水準にあるのか」
を見るために使われる指標です。
私自身も個別株を検討するときには、確認している項目の一つです。
ただし、
「PERが低い=割安だから買い」
「PERが高い=割高だから買わない」
と単純に判断できるものではありません。
この記事では、
- PERとは何か
- PERの計算方法
- PERが低い・高いとはどういうことか
- PERを見るときの比較方法
- 予想PER(フォワードPER)とは何か
- PERだけで投資判断してはいけない理由
について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
■PER(株価収益率)とは?
PERとは、Price Earnings Ratio(株価収益率)の略称です。
日本取引所グループ(JPX)では、PERを「株価を1株当たり当期純利益で除したもの」としています。
簡単に言えば、「1株当たりの利益に対して、株価が何倍の水準になっているのか」を見る指標です。
計算式は、
PER(倍)= 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)
となります。
例えば、
- 株価:1,000円
- EPS:100円
の企業であれば、
1,000円 ÷ 100円 = PER10倍となります。
つまり、この場合は「株価が1株当たり利益の10倍の水準にある」ということです。
■EPSとは?
PERを理解するためには、EPSについても知っておく必要があります。
EPSとは、Earnings Per Share(1株当たり利益)のことです。
企業が生み出した当期純利益を1株当たりに換算した指標です。
例えば、
企業の当期純利益が10億円で、計算に用いる株式数が1,000万株だったとすると、
10億円 ÷ 1,000万株 = EPS100円
というイメージです。
PERは、このEPSと現在の株価を比較しているわけです。
そのため、PERを見るときには、株価だけでなく利益の変化にも注目することが重要です。
■「株価=EPS×PER」と考えることもできる
先ほどの計算式、
『PER=株価÷EPS』を変形すると、
『株価=EPS×PER』となります。
例えば、
- EPS:100円
- PER:10倍
なら、
100円 × 10倍 = 1,000円となります。
この関係から考えると、株価水準には、
① 企業がどの程度の利益(EPS)を生み出しているか
② その利益に対して市場がどの程度の倍率(PER)をつけているか
という2つの要素が関係していることが分かります。
ただし、「EPSが増えれば必ず株価が上がる」という意味ではありません。
企業の利益が増えても、市場の成長期待が低下してPERが下がれば、株価が上昇しないこともあります。
反対に、現在の利益がそれほど増えていなくても、将来への期待などからPERが上昇し、株価が上昇する場合もあります。
PERは、企業の利益と市場からの評価の関係を見るための指標と考えると分かりやすいでしょう。
■PERが低いとどういう意味?
一般的にPERが低い企業は、利益に対して株価が相対的に低い水準にあると見ることができます。
そのため、「割安株」を探すときの参考指標としてPERが使われることがあります。
しかし、ここで注意したいのが、「低PER=割安」ではないということです。
例えば、PERが低くなっている背景には、
- 今後の業績悪化が予想されている
- 成長率の低下が懸念されている
- 業界全体の先行きに不透明感がある
- 一時的な利益によってEPSが大きくなっている
- 企業固有のリスクが意識されている
など、さまざまな理由が考えられます。
つまり、
「PERが低いからお買い得」と判断するのではなく、
「なぜこの企業のPERは低いのか?」を調べることが重要です。
私自身も低PERの企業を見るときには、売上や利益の推移だけでなく、決算資料や有価証券報告書などを確認し、その背景を調べるようにしています。
■PERが高いとどういう意味?
PERが高い場合は、利益に対して株価が相対的に高い水準にあります。
その背景の一つとして考えられるのが、将来の成長に対する市場の期待です。
例えば、
「今後、利益が大きく成長するのではないか」
という期待が強い企業では、現在の利益に対して高い株価がつくことがあります。
その結果、PERも高くなります。
ただし、PERが高い企業=必ず成長企業というわけではありません。
株価はさまざまな要因によって形成されるため、PERが高い理由についても確認する必要があります。
■PERが高い企業は危険なの?
PERが高いという理由だけで、その企業への投資が危険だと判断することはできません。
成長への期待が高い企業では、PERが高い水準になる場合があります。
一方で、市場から高い成長を期待されている企業では、
- 利益成長率の鈍化
- 業績予想の下方修正
- 市場予想を下回る決算
- 事業環境の悪化
などによって市場の評価が変化すると、株価が大きく変動する場合があります。
例えば、
EPS100円 × PER30倍 = 株価3,000円
だった企業が、EPS100円のままでも市場の評価が変わり、
EPS100円 × PER20倍 = 株価2,000円
という水準になることも、計算上は考えられます。
これは一般にPERの低下(PERの縮小)などと表現されます。
逆に、市場からの評価が高まりPERが上昇する場合もあります。
つまり、高PER企業を見るときには、
「現在のPERを支えている成長期待に、どのような根拠があるのか」を考えることが重要です。
■PERに「絶対的な目安」はある?
初心者の方がPERを勉強すると、「PERは何倍なら割安なの?」と疑問に思うかもしれません。
しかし、すべての企業に共通する「PER○倍以下なら割安」という基準はありません。
PERの水準は、
- 業種
- 企業の成長率
- 収益性
- 財務状況
- 景気
- 金利
- 市場環境
- 投資家からの期待
などによって異なります。
そのため、「PER10倍だから安い」、「PER30倍だから高すぎる」
と数字だけで判断するのは避けた方がよいでしょう。
■PERは「比較」して見ることが大切
私はPER単体の数字よりも、比較することを意識しています。
例えば、次の3つです。
① 同業他社と比較する
同じような事業を行っている企業同士でPERを比較します。
例えば、同じ業界の企業がPER20倍前後で取引されているのに、ある企業だけPER10倍だった場合、
「なぜこの会社だけPERが低いのだろう?」と考えるきっかけになります。
ただし、同じ業界でも成長率や収益性、財務状況、事業構成などが異なるため、PERだけで優劣を決めることはできません。
② その企業自身の過去PERと比較する
現在のPERを、その企業自身の過去のPERと比較する方法もあります。
過去よりPERが低くなっている場合、
- 市場全体の評価が低下した
- 成長期待が低下した
- EPSが増加した
- 一時的に株価が下落した
など、さまざまな理由が考えられます。
「過去より低いから割安」と結論づけず、PERが変化した理由を確認することが重要です。
③ 市場全体・業種別PERと比較する
日本取引所グループ(JPX)では、東証上場企業について規模別・業種別PER・PBRを公表しています。
こうしたデータも、現在のPER水準を考える際の参考になります。
ただし、市場平均より低ければ必ず割安という意味ではありません。
あくまで比較材料の一つとして利用します。
■予想PER(フォワードPER)とは?
PERを見るときに、「実績PER」、「予想PER(フォワードPER)」
という言葉を見ることがあります。
実績PER
過去の実績利益をもとに計算するPERです。
日本取引所グループが公表している規模別・業種別PER・PBRについては、実績ベースで計算されています。
予想PER(フォワードPER)
将来の予想EPSをもとに計算するPERです。
考え方としては、予想PER = 現在の株価 ÷ 予想EPSとなります。
例えば、
現在の株価が3,000円で、
現在のEPSが100円なら、
実績PER=30倍です。
一方、次期の予想EPSが200円であれば、
3,000円 ÷ 200円 =
予想PER15倍となります。
ただし、ここで非常に重要なのが、「予想EPSはあくまで予想である」ということです。
将来の利益が予想どおりになる保証はありません。
業績予想が下方修正されれば予想PERも変化します。
また、金融情報サイトや証券会社によって、会社予想・アナリスト予想など計算に使用しているEPSが異なる場合があります。
予想PERを見るときには、どの利益予想を使って計算しているのかも確認するようにしましょう。
■赤字企業ではPERを使いにくい
PERにはもう一つ重要な注意点があります。
それが、EPSがマイナスの企業です。
企業が赤字で1株当たり利益がマイナスになっている場合、通常のPERでは株価水準を適切に比較しにくくなります。
日本取引所グループの規模別・業種別PER・PBRでも、1株当たり当期純利益がマイナスの場合、PERは算出不能として「-」で表示されます。
そのため赤字企業については、
- 売上高
- 営業利益
- キャッシュフロー
- 財務状況
- PBR
- 今後の黒字化の可能性
など、ほかの情報も合わせて確認する必要があります。
■一時的に利益が増えた企業にも注意
PERはEPSを使って計算するため、利益が一時的に大きく増減するとPERも大きく変化します。
例えば、
- 保有資産の売却
- 子会社や事業の売却
- 特別利益の計上
などによって当期純利益が一時的に増えた場合、EPSが大きくなり、結果としてPERが低く見えることがあります。
反対に、一時的な特別損失によって利益が減少すれば、PERが高く見える場合もあります。
そのため私は、PERを見るときには、
「そのEPSは企業の通常の収益力を反映しているのか?」という点も確認するようにしています。
■PERだけで投資判断してはいけない
PERは企業の株価水準を見るうえで便利な指標ですが、PERだけで投資判断を行うことはできません。
金融庁の資料でも、一つの指標だけにこだわるのではなく、複数の指標を参考にさまざまな視点から企業を見ることの重要性が紹介されています。
私自身が個別株を検討するときには、
- 売上高
- 営業利益・経常利益
- 当期純利益
- EPS
- 自己資本比率
- キャッシュフロー
- PER
- PBR
- ROE
- ROIC
- 事業内容
- 事業等のリスク
- 市場環境
などを確認しています。
PERは、「この企業は安いから買う」という答えを出してくれる指標ではありません。
むしろ、
「なぜこの企業のPERはこの水準なのだろう?」と考えるための入り口として活用するのがよいと私は考えています。
■初心者はPERをどう見ればいい?
初めてPERを見る場合は、次のような順番で確認すると分かりやすいと思います。
① 現在のPERを確認する
↓
② 同業他社のPERと比較する
↓
③ その企業自身の過去PERと比較する
↓
④ EPSがどのように推移しているか確認する
↓
⑤ PERが高い・低い理由を決算資料などから考える
↓
⑥ PER以外の財務指標や事業内容も確認する
この流れで見ていくと、
単に、
「PER10倍だから安い!」
ではなく、
「PER10倍だけど、なぜ市場からこの評価を受けているんだろう?」
と一歩踏み込んで企業を見ることができます。
私自身も、PERを「買う・買わないを決める数字」ではなく、企業をさらに調べるきっかけになる数字として利用しています。
■まとめ
PER(株価収益率)とは、
企業の1株当たり利益に対して、株価が何倍の水準にあるのかを見るための代表的な株価指標です。
計算式は、PER = 株価 ÷ EPSです。
PERが低ければ利益に対して株価が相対的に低く、高ければ利益に対して株価が相対的に高いことを示します。
ただし、
- 低PER=必ず割安ではない
- 高PER=必ず割高ではない
- 業種によってPER水準は異なる
- 成長率によって評価は変わる
- 赤字企業ではPERを使いにくい
- 一時的な利益によってPERが変化することがある
- 予想PERは将来の利益予想によって変化する
といった注意点があります。
そのため、PERの数字だけで投資判断をしないことが大切です。
同業他社、過去のPER、EPSの成長、財務状況、事業内容などと組み合わせながら企業を見ていきましょう。
PERを「答え」として見るのではなく、
企業についてさらに調べるための一つの材料
として活用することが、ファンダメンタルズ分析を学ぶ第一歩になると私は考えています。
■次におすすめの記事
次は「PBR・ROEとは?」へ
PERについて理解したら、次は企業の資産価値や資本効率を見るために使われる「PBR・ROE」について学んでみましょう。
PER・PBR・ROEはそれぞれ異なる視点から企業を見る指標です。1つの指標だけで判断するのではなく、複数の指標や企業の成長性などを組み合わせて考えることが大切です。
▶ PBR・ROEとは?企業価値を見るための重要指標を解説

あわせて読みたい
・ファンダメンタルズ分析とは?企業の価値を考えるための基本を初心者向けに解説

■参考・情報源
本記事の作成・更新にあたり、以下の公的機関等の情報を参考にしています。
日本取引所グループ(JPX)「株価収益率」
PERの定義・基本的な考え方
https://www.jpx.co.jp/glossary/ka/73.html
日本取引所グループ(JPX)「1株当たり当期純利益」
EPSの定義について
https://www.jpx.co.jp/glossary/0-9/558.html
日本取引所グループ(JPX)「規模別・業種別PER・PBR」
東証上場企業の市場別・業種別PER・PBRの比較データ
https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/04.html
日本取引所グループ(JPX)「よくあるご質問(統計資料)」
東証公表のPER・PBRが実績ベースであることや、EPSがマイナスの場合の取り扱いについて
https://www.jpx.co.jp/faq/statistical_data.html
金融庁「気になる会社について詳しく掘り下げるべし!」
PERを含む投資指標・経営指標の基本的な考え方
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/disclose_wg/siryou/20160219/04.pdf
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